受験を通じて

 

学校法人である河合塾様が出版している『栄冠めざして』。私は当塾の塾生やその保護者様と大学入試の話をする際,これを頻繁に活用させていただいております。

『栄冠めざして』があるおかげで各大学の募集要項が手元になくとも科目や配点を知ることができますし,さらにはボーダー等の目安も知ることができます。本当にありがとうございます。

 

今回のブログは受験にまつわる話です。

高校入試は岐阜県内の多くの受験生にとって基本的な受験パターンとなる普通科の公立高校入試一次試験に,大学入試は国公立大学の前期試験に絞ります。

国公立大も定員の15%ほどが推薦入試に充てられる時代になったとはいえ,ここを主として大学入試に臨むというのはあまりに危険ですから除外します。

 

高校入試は 5教科の入試が基本で,各科とも均等に100点ずつの満点が500点という形式です。

来春の入試では 5高は内申と入試の配分が 3 : 7 で揃っており,5高を志望するのであれば,深さこそ異なるものの基本的に取り組むことは共通しています。

 

ところが大学入試に目を向けると,同じ国公立大学でもセンター試験 (マーク式) と二次試験 (記述式) を実施するという形式こそ揃っていますが,科目も異なれば配点も異なります。

センター試験は 5教科 7科目で満点は950点 (理系であれば英語250点⋅数学200点⋅国語200点⋅理科200点⋅社会100点) と設定されています。

選択科目である理科は化学⋅物理⋅生物⋅地学から 2科,同じく社会は地歴 (地理⋅日本史⋅世界史) または公民 (現代社会⋅倫理⋅政経⋅倫理政経) から 1科というのが一般的です。

しかし,大学だけでなく学部・学科によっても課す科目やその配点は自由に設定できることになっており,ここが高校入試とは大きく異なるところです。

 

東海 3県の国公立大学の工学部機械工学科を例に挙げて比較すると以下のようになります。

 

【名古屋大】 センター 600〔英語100⋅数学100⋅国語200⋅理科 (物理⋅化学) 100⋅社会 (地歴 or 倫理政経から 1科) 100〕: 二次 1300〔英語300⋅数学500⋅理科 (物理⋅化学) 500〕

【名古屋工業大】 センター 450〔英語100⋅数学100⋅国語100⋅理科 (物理 or 化学 or 生物から 2科) 100⋅社会 (地歴公民から 1科) 50〕: 二次 1000〔英語200⋅数学400⋅理科 (物理) 400〕

【岐阜大】 センター 700〔英語150⋅数学150⋅国語150⋅理科 (物理 or 化学 or 生物から 2科) 150⋅社会 (地歴公民から 1科) 100〕: 二次 700〔英語100⋅数学300⋅理科 (物理) 300〕

【三重大】 センター 550〔英語200⋅数学100⋅国語100⋅理科 (物理⋅化学) 100⋅社会 (地歴公民から 1科) 50〕: 二次 400〔数学250⋅理科 (物理 or 化学) 150〕

 

一般に難関大と言われるところはセンター試験において高い得点率が求められると同時に,社会科の受験科目において “科目の縛り” があったりもします。

さらには,難関大においてはあくまでセンター試験は二次試験を受験するための位置づけとなっており,センター試験よりも二次試験のほうが配点が高く,受験科目数も多くなります。

上記した 4大学はそれが顕著に表れている例と言えます。

 

話を工学部機械工学科に戻しますと,大学で機械工学を学ぶわけですから,数学と物理の完成度を高めておくことは言わずもがなです。

もちろん,入試において必要というだけでなく,それらは大学入学後の学習のための基礎知識であり素地ともなるわけですから,高校生のうちから懸命に努力しておかなければなりません。

合計点に占める各科の割合を見ると,このことも顕著に表れています。

 

【名古屋大】 数学 31.6%⋅英語 21.1%⋅物理 15.8%⋅化学 15.8%⋅国語 10.5%⋅社会 5.3% (数学と物理で47.4%)

【名古屋工業大】 数学 34.5%⋅物理 31.0%⋅英語 20.7%⋅国語 6.9%⋅化学 3.4%⋅社会 3.4% (数学と物理で65.5%)

【岐阜大】 数学 32.1%⋅物理 26.8%⋅英語 17.9%⋅国語 10.7%⋅社会 7.1%⋅化学 5.4% (数学と物理で58.9%)

【三重大】 数学 36.8%⋅物理 21.1%⋅英語 21.1%⋅国語 10.5%⋅化学 5.3%⋅社会 5.3% (数学と物理で57.9%)

※ 名古屋工業大と岐阜大はセンターにおいて化学ではなく生物,三重大は二次で化学でも受験可となっていますが,現実的ではないためセンターは物理⋅化学,二次は物理で固定しました。

 

どの大学も数学と物理だけで全体のおよそ 5割から 6割の配点を占めており,どの教科もバランスよく学習を進める必要のあった高校入試とは全く話が違います。

高1生や高2生の間は,とりあえず名古屋大に行けたらいいなと考えて学習を進めておく。こんな受験生が多いのは,大学入試を高校入試の延長線上だと捉えてしまっているからでしょう。

先述したように,大学入試は高校入試のように 5教科とも一律の配点ではないうえに,科目によっても比重が異なります。そんな中途半端な気持ちで受験に向かってもおそらくうまくいきません。

上記の理由に加えてライバルは岐阜県内や東海 3県内だけでなく全国にいますし,高校入試とは比べものにならない高い競争倍率です。

 

こういうことからも,当塾では塾生たちに早ければ高1生の秋,遅くとも高2生の夏までに志望校を決めてもらっています。

理系・文系に分かれる高2生の初めから受験に向けた準備を着々と進め,日々の課題に追われることなくすべきことを淡々と熟していく。

 

私は「部活を引退してからの高3生の夏からが勝負だ」などとは到底言いません。

というよりも,大学入試に臨む高校生にとって高3生の夏は頑張って当たり前ですし,その時点まで努力を怠ってきた受験生が容易く学力を上げる魔法のようなものは存在するはずもないのです。

その時点までにいかに基礎を固めることができているか。高3生の夏は,この基礎に時間をかけながらきっちりとした上積みをしていく時期なのです。

 

同時に,これまでのブログでもたびたび取り上げているように,当塾は高校生に対して定期テストや各種模試で結果を残すことに特化した指導を一切行ないません。

当塾は『将来を見据えた指導』を行なう塾ですから,私たちにはそんな無責任な指導はできまないと考えております。

模試の判定』というタイトルのブログでも申し上げましたが,付け焼刃の学習がいかに無力なものなのか。それは大学入試や大学入学後に明らかになります。

中学生の頃から定期テストでも岐阜新聞テストのような模試でも,やれ過去問題だ,やれ予想問題だなどと “お膳立て” を使って結果を残してきた高校生にはつらいものがありますが。

 

学ぶことの意味は何なのか。

これを真剣に考え,あれこれと実践することによって子どもたちは成長し,そして未来が拓けてくるのだと私たちは考えます。

受験は社会に出る前にこれを磨き上げ,成長できる恰好の舞台なのです。学びは一生続くものですからね。

 

お車での送迎

 

当塾は95.8%もの生徒が保護者様によるお車での送迎により通塾しています。

 

塾へ通うのは中学生ならば自転車で,高校生ならば学校帰りに,というパターンが世間一般には多いように思われます。実際,私もそうでした。

しかし,当塾の場合は上記の割合からも明白ですが,距離を問わずお車による送迎が圧倒的な割合を占めています。

送迎であれば生徒たちが塾からの帰宅途中に不要なトラブルに巻き込まれるリスクもありませんから,各ご家庭にお車での送迎のご協力をいただけることは本当にありがたいことと考えております。

 

19時台や22時台には,送迎のお車がかなりの台数に上ります。

しかし,当塾が入居するこの建物には120台分にもおよぶ共用駐車場がありますから,路上での駐停車等により近隣にご迷惑をおかけすることは一切ありません。

教員への質問が長引いて保護者様にお車でお待ちいただく際や,私を含めた当塾の教員が送迎時の保護者様とお話しさせていただく際に,ゆとりのある駐車場の存在は本当に助かっています。

さらに,これだけの共用駐車場があることで,保護者会でお集まりいただく際も不安なく開催することができます。

 

 

高校生の自習室の様子です。

当塾の高校部の生徒たちは,火曜日から土曜日の 5日間は授業で週4日,自習で週1日というスタイルが一般的です。

 

当塾の高校生はいったん帰宅して食事をとってから塾へ,というケースが多いようです。

この形態であれば子どもが学校帰りにどこをほっつき歩いているかわからないということを防ぐことができますし,保護者様も安心だと仰ってくれています。

当塾には各務原市内に住む岐阜高や岐阜北高をはじめとする 5高に通う高校生を中心に,岐阜市に住む岐阜高・加納高・長良高に通う 3名の高校生が通塾してくれています。

 

送迎によるご足労,いつも本当にありがとうございます。

そのご足労ならびに保護者様のご期待にお応えするべく,教員一同全力でお子さまの指導にあたってまいります。

 

対話を通じて

 

授業が始まる夕方の時間帯に,いつも私は遅めの昼食をとっています (世間一般ではおよそ夕食の時間帯ですが)。

 

1人で考え事をしながらとることもありますが,食事を持参して早くから自習に来ている生徒ととることもあり,いろいろな話をしながら生徒と食事をとるこの時間は私の楽しみの 1つです。

学習や受験,進路に関する話,時事的な話はもちろんのこと,その生徒の学校での話を聞くこともあれば,くだらない話なんかもします。

 

授業や質問受付時の対応だけでなく,それら以外の場でも日頃からさまざまなアドバイスをしたり相談に乗ったり,上記したように食事をとりながらいろいろと話をする。

私はこれまでのキャリアにおいても同様にそうしてきましたし,こういった関わりを積み重ねて確たる信頼関係というのは構築されていくのだと思います。

 

昨今は日常のコミュニケーションにおいても face to face ではない形態が増えつつあります。

教育に目を向けても映像による授業が隆盛を誇っていたりと,あらゆることが便利になっていくにつれて “弊害” も発生していることは否めません。

 

対話が生み出す力の大きさは計り知れないものがあります。

私はその可能性を信じていますし,これからも進路探究塾 Mirai は face to face の対面教育にこだわるとともに,日々の対話を重ねながら生徒たちの望む進路へのサポートをしていきます。

 

心地よい時間

 

ここ数日は入塾希望の方の説明会や定期テスト前の高校生の質問受付,塾生保護者の方との懇談会にと慌ただしい日々を過ごしておりました。

 

こういった忙しさは塾教員として非常に心地よいものです。

当塾に興味を持ってお越し下さる方とお会いできること,ならびに当塾の方針にご賛同いただいてお子さまを通わせていただいている保護者様とお話しできること。

さらには,学びの場を求めて,かつ,高みを目指して当塾へ通ってくれる塾生たちと過ごせること。

心地よさを感じるとともに塾教員としてのやりがい・醍醐味を感じますし,改めて開塾してよかったと心から思える瞬間です。

 

日々のこのような小さな積み重ねを繰り返すことで,まだ開塾して 7ヶ月の当塾が “地域に根ざした塾” となっていけるものと考えております。

これからも地域の方々に喜んでいただける塾を目指し,教員一同頑張っていく決意です。

 

先日,入塾説明会にお越しになった保護者様が,当塾の高校生が自習に励んでいる姿と自習室の空気感・雰囲気に感嘆しておられました。

9月27日(日) は岐阜高・岐阜北高・加納高・岐山高・長良高が前期期末テスト期間中ということもあって,多くの高校生が自習室を利用していました。

この日は理系の教員と文系の教員を 1名ずつ配置し,各科の質問受付も行ないつつ,私から見てもどの生徒も有意義な時間を過ごしているように感じました。

 

当塾の生徒たちは定期テスト前に限らずいつもこんな感じだと説明すると,その方は当塾の指導方針である “長い目で見た学力を身につける” の意味を感じ取られているようでした。

過去問や予想問題に頼るのではなく,決められた範囲をきっちりとやり抜く習慣がついていれば自ずと未来は拓けるのです。

 

日曜日と火曜日の 2日間で,上記の方を含めて 2名の方が入塾をお決めになられ,また新たな仲間を迎えることができました。ありがとうございます。

高校進学後も見越した大学受験で勝利するための指導と環境,同時に将来を見据えた指導。これが進路探究塾 Mirai の実践する教育です。

 

学ぶことの意味《中学生編》

 

先日,授業の冒頭で当塾の中1生に「学ぶことの意味は何か」を問いました。

 

子どもたちからは「受験のため」,「将来のため」,または「やらなければならないから」など様々な答えが返ってきます。

毎月にわたって将来設計指導を行なっている当塾の生徒たちでさえこの状態ですから,いったいどれだけの中学生が目的意識を持って日々の学習に臨めているかと不安になります。

 

「将来のため」というと聞こえが良いですが,具体的な夢が決まっているわけでもなくただ漠然と学んでいるだけであれば,それは義務的に学習を行なっているに過ぎません。

学習だけに限らず,確たる夢や目標が定まって,人はようやく本気になれるのです。

 

私は中学生にとっての「学ぶことの意味」は,いわゆる一般教養を身につけることに加え,大学受験に打ち勝つための,または社会に出て以降求められる忍耐力をつけるためと定義しております。

だからこそ,私は中学生に対して定期テストの過去問や予想問題といった安易な “お膳立て” を提供したくない,またはしてはいけないと考えております。

当塾の生徒たちが “お膳立て” がなくとも定期テストで結果を残すのは,確たる信念を持って生徒が学習に取り組んでいるからに他なりません。

彼らの頑張りに関してはこれまでのブログでも何度か紹介してきましたので,よろしければ併せてご覧ください。

 

辛い,やりたくない,面倒だ。できることなら楽をして切り抜けたい。

子どもたちの多くはそう考えますし,または何のために学ぶのか,なぜこんなことをする必要があるのかと自問自答することもあります。

忍耐力と同時に,弱い自分に打ち勝てる強靭な精神力も学習や受験という機会を通して磨かれるのです。

“お膳立て” を提供してもらい,それに縋っているうちは,これらが磨かれることは決してありません。

 

大学合格まで見届けた社会人や大学生の教え子たちと会う際,彼らの多くが口を揃えて私は「厳しかった」と言います。しかし,それがあったからこそ「成長できた」とも言ってくれます。

子育てと同じで,甘やかすのは簡単なことですし,お互い気持ち的にも非常に楽です。

 

私は塾で指導するようになって18年半が経っておりますから,正直なところ,中学生の定期テストの出題予想をしてくれと言われれば容易くできます。

しかし,長い目で見れば,それを与える,または与え続けることによって子どもたちにどのような弊害が出るか。これまでのキャリアでも多くの事例を目の当たりにしてきました。

 

その最たる例が,中学時代の成績 (定期テスト・内申・実力テスト) が非常に優秀で公立のトップ高に進学したにもかかわらず,大学受験では全く揮わないというケースです。

「学ぶことの意味」を曖昧にしたまま,中学時代は “お膳立て” を熟すことで結果を残し続けた。これは,さして難易度の高くない中学内容だからこそ成し得られることです。

高校では,特に進学校であればそうはいきません。

 

 

写真は本日撮影した,高校生の自習室の様子です。

多くの高校において本日または明日が期末テスト開始日ですから,どの生徒もその準備に余念がないといった感じで集中して取り組んでいます。

テスト前だからと慌てて取り組んでいる生徒も一部おりますが,この中には数学や化学,日本史等で今回の期末テストに指定されている範囲ではない箇所の学習に取り組んでいる生徒もいます。

さらには,翌日ではなく週明けに実施される科目の学習に取り組んでいる生徒や,すでに試験が終わった科目の学習に取り組んでいる生徒も見られます。

 

極論的な言い方ではあるものの,本気で大学受験に挑もうとするならこのくらいの余裕が必要です。

直前にバタバタするとか,徹夜しなければならないとか。直前に詰め込んだところで先には何一つとして繋がらないのです。

 

直近の単元が理解できている前提で学ぶ単元であったり,各単元の “流れ” が必要な科目というのがあります。

いわゆる点数の取れない生徒というのは,そういった流れをすっ飛ばして指定範囲の単元だけを捻じ伏せようとテスト前に慌てたり,過去問や当て物のような予想問題に縋ったりする。

こんな状態で結果など出せるはずもありませんし,これはただの付け焼刃に過ぎず,まさに『木を見て森を見ず』の状態です。

 

残念ながら,高校は合格することが目的ではありません。進学校であればあるほど,これは顕著です。

いわゆる「良い高校」に入学できたといっても,その後目標もなく淡々と日々を過ごし,学校からの課題に追われていると卒業時に大きなしっぺ返しが待っています。

毎年,岐阜高で30%強,岐阜北高や加納高でおよそ10%の生徒が浪人するという事実。

もちろん,ここには難関大を目指しての “前向きな” 浪人も含まれますが,全てがそうではありません。浪人しても「だめなものはだめ」ということです。

 

合格した直後から新たな戦いが始まり,中学生の頃より難易度の高い学問と対峙し,さらには周囲との厳しい競争に晒されます。

一般的に思い描く “楽しい高校生活” とはかけ離れた世界が進学校にはあり,ひとたび競争から零れ落ちてしまうと上位に這い上がることは至難の業。これが現実です。

 

進路探究塾 Mirai は中学生に対し,定期テストで得点できればそれでよし,または高校に合格できればそれでよしという指導を行なっておりません。

同時に,当塾には高校受験までしか指導できないという教員は 1名もおりません。私を含めた当塾在籍 8名の教員全員が高3生を担当しており,そのうち 5名が中学部の指導も担当しています。

ここでいう高3生というのは,センター試験を経て国公立大の二次試験に臨むという “標準的な” 高3生のことであります。当塾では高校生の学校準拠指導や推薦入試対策は行なっておりません。

 

小学生または中学生の頃から,大学受験やその先の将来を見据えての一貫した指導を行なう。

言い換えれば,本当の意味で将来を見据えた “筋の通った指導” が当塾の実践する教育なのです。

 

医学部の定員削減

 

9月13日(日) の日経新聞の朝刊 1面に『医学部の定員削減』という記事が掲載されました。

 

この記事をお読みになったという方も多くいらっしゃると思います。

当塾にも医師を志す生徒が在籍しておりますから,私も非常に興味深く記事を読んでおりました。

 

上記は2020年度から実施ということで,現在の中1生が大学に進学する年度にあたります。

現在の中1生といえばセンター試験が廃止されて『達成度テスト (仮称)』に切り替わる元年でもありますから,いろいろな混乱が予想されます。

 

子どもたちが夢や目標をしっかりと持ち,長い時間をかけてその準備をしていく。

私たちは,方式・様式が変わったからうまくいかなくなるような “薄っぺらい学び” を提供するのではなく,“確たる学力” を身につけさせる指導を展開し,子どもたちの夢の実現をサポートします。

 

There is no royal road to learning.

 

There is no royal road to learning.

『学問に王道なし』と訳出されるこの諺は,「幾何学の父」と称される数学者ユークリッドが用いた言葉をもとにして生まれたものだそうです。

 

これまでのブログでも取り上げてきましたが,何かを学ぶ,または身につける過程においては,じっくりと腰を据えて基礎づくりに励み,コツコツと知識を蓄え続けることが何より重要です。

真の結果を求めるなら,“すぐに役立つもの” を通して身につけた脆い手法では崩れ去るのもあっという間なのです。

 

英文読解に “速読” という手法があります。

字のごとく “速く (英文を) 読む” ということですが,この言葉の解釈を誤ると大変です。大学受験生にとって,英文の速読は万能の手法ではないということを覚えておく必要があります。

 

英語における速読というのはテクニックではなく,語彙力をつけ,短文の解釈,つまり精読の訓練を繰り返したうえで,多読に多読を重ねた先にようやく辿り着ける手法です。

当然のことですが,ゆっくり読んで理解できないものを速く読んで理解できるはずもありません。

大学受験生に向けて英文を速読する手法のようなものがあちこちで語られておりますが,語彙力も乏しく,精読に取り組んでこなかった受験生にはそれは付け焼刃にさえなりません。

 

当塾では『速読英単語』(Z会出版) を用いて単語テストを実施していることを先日のブログでも触れましたが,生徒たちには 1周目が終わるまでは本文のセクションは見なくてよいと話しています。

なお,当塾の塾生たちに取り組ませているペースに当てはめると,『速読英単語』の単語テストが完了する高2生の12月以降ということになります。

当塾では速読力をつけさせることを目的に『速読英単語』を採択しているのではなく,それはあくまで後からついてくるものと位置付けているのです。

 

まずは確たる語彙力,これに尽きます。未知の語彙が数多く残っている状態で,英文の読解はもちろん速読など不可能です。

仮にそれを読めている状態だというなら,読書経験の浅い小学校低学年の児童が新聞を読んで「わかる」と言っているのと同じです。これは文章を流している,撫でているに過ぎないのです。

 

長文読解の訓練は,単語帳などを通して大学受験に必要とされる語彙を “目にしたことがある” 状態にしてからでも全く遅くありません。

併せて短文での精読にも並行して取り組んでおき,語彙がある程度固まってきたら長文読解の訓練に入っていく。

二次で英語が課される難関大を受験するなら,高2生の終わりまでにどれだけ基礎力をつけてきたかが非常に重要なのです。

 

塾選び 《続編》

 

先日の『塾選び』と題したブログでも申し上げましたが,私には中2生の娘と小5生の息子がおります。

小中学生時代の私と同じで,いずれも学ぶ・知るということに熱心なタイプではありません。娘は部活が中心,息子は遊んでばかりのお気楽な毎日を過ごしております。

 

娘・息子には長らく通っていた塾がありましたが,なかなか成果が出なかったこともあって本人たちの希望で今年の 4月から自宅近くの塾へ移りました。

何度かお邪魔して中の雰囲気も拝見させていただきましたが,その塾はベテランのいわば “職人” のような先生方が指導にあたっている昔気質の個人塾という印象を受けております。

子どもたちが喜んで通ってくれていることが何よりです。

 

娘は数学がとても苦手で,これまでも各種テストにおいて足を引っ張る教科でありました。

小学校の算数の時点から苦手意識がありましたから,おそらく楽しさが見出だせなかったことがその主な要因です。きっかけが掴めなかったのでしょうね。

 

そんな中,娘が今回の前期期末テストの数学で96点を取ってきました。

平均が60点台だったということに加え,連立方程式の文章問題という力量が試される単元がメインでしたから,塾教員の視点に加えて保護者としての視点からも価値ある結果だと見ております。

彼女はこれまでの 6回の定期テストの中で,数学はもちろんのこと合計点でも過去最高をマークしました。

現在の塾に移ってからはテストに対する取り組み方・意識が変わり,最近は数学が楽しいとまで話すようになりました。凄まじい変化に驚いているとともに,親として非常に嬉しく思っています。

 

塾教員としてのキャリアが長くベテランであっても,やはり子育てをしたことがある教員とそうでない教員とは明らかな差があります。

私も家族を持つようになってから意識が変わりました。やはり,娘たちが通っている塾のメインで担当されているお二方にもお子様がいらっしゃるとのことです。

先日の『塾選び』のブログに追記するならば,塾または校舎の責任者が子育て経験者であるか,または最低でも 1名は子育てをしたことのある教員が常駐しているところがよいでしょう。

 

どんな想いで保護者様はお子さまを育てているのだろうか,または塾に預けていただいているのだろうか。子育てをしたことがなければ,これは絶対に忖度できません。

こういった想いが違ってくるというか,何より教員としての深みが違ってくるわけです。

 

予想問題というものに対する私見

 

今回のブログはいわゆる過去問と,様々な形で市中に溢れる予想問題に対する私見です。

 

過去問は出題の仕方や時間配分など,いわゆる傾向に “慣れる” ためには便利なものです。重視はしていないものの,私も生徒たちの入試前には必ず過去問に取り組ませます。

しかし,本番においてはいつも同じ形式または同じような難易度で出題されるとは限りませんから,過去問を偏重しませんし絶対的な存在とも位置づけません。

 

これまでのブログでも申し上げてきましたが,私はとにかく予想問題というものに抵抗を感じております。

私はこれまでの人生を振り返ってもあらゆる場面でそういったものに頼らずに生きてきたという自負がありますし,無責任なことを言って子どもたちを惑わせたくないという思いもあります。

 

先生の言うことだから間違いないと信じる生徒は多くいるでしょうし,入試前などは藁にも縋りたいという気持ちの生徒は多くいるでしょう。

しかし,そんな安易なものに頼って偶然にもうまくいってしまうと,以降は「予想問題がないと困る」という状態に陥ります。自主性もなく,かつ “味を占める” というのは本当に危険な状態です。

基礎基本を大切にして,決められたものを徹底してやり抜く。これが定期テスト,実力テスト,各種模試,入試に向けた学習のあるべき姿なのです。

 

続きまして,入試においていわゆる出題傾向が変わった際の実例をご紹介します。

過去問・予想問題漬けの受験生たちを惑わせた端的な例ではありますが,参考までにお読みください。

 

2015年の京都大の英語。

定番化していた英文和訳・和文英訳が一辺倒という出題形式が変化し,試験中に受験生から「まじかよ」という言葉が聞こえてきたそうです (京都大に通う教え子の後輩が話していたとのこと)。

問題に目を通すと確かに出題形式は変化したと言えますが,英文を読み取る,または解釈するという観点では難易度に著しい変化があったようには見受けられません。

とは言え,英文和訳・和文英訳しか出題されないと決めてかかっていた受験生は驚いたことでしょう。

 

また,2008年の岐阜県公立高校入試の数学。

それ以前は易しかった問題の難易度が急激に上がり,高得点勝負だったものが一転して実力を試されるものになりました。岐阜高の入試でも,試験終了直後は騒然としたそうです。

過去問を中心に取り組み,数学は脅威ではないと感じていた受験生はさぞ焦っただろうと思います。

当時も現在と同様に過去問偏重の指導をしていなかったこともあって私の教え子たちは難なく切り抜け,むしろ数学の得点で内申の不足を補って合格を掴んだケースさえありました。

 

過去問はあくまで過去問。

予想問題はその過去問をもとにして作成されたものですから,これさえやっていればよいというものにはなり得ませんし,どうしても作成者によって偏りが出てしまうものです。

占いではありませんが,『当たるも八卦,当たらぬも八卦』。たとえ予想が外れても,その作成者は何の責任も取ってくれませんからね。

 

上記したように,基礎基本を大切にして決められたものを徹底してやり抜く。これが学習のあるべき姿です。

“お手軽なもの” に頼っているうちは,真の成長などあるはずもないのです。

 

これと決めた 1冊を究める 《続々編》

 

以前に『これと決めた 1冊を究める』というタイトルで,私が大学受験生だった頃に英語の学習で取り組んでいた参考書を紹介しました。

今回は和文英訳 (いわゆる英作文) 対策用に取り組んでいた 1冊を紹介します。

 

私が和文英訳対策として取り組んだ参考書は『基本英文700選』(駿台文庫) です。

現在は『新・基本英文700選』として改訂版が発売されており,英文のブラッシュアップもさることながら CD も付属されてパワーアップしています (私の頃はテープでした (しかも別売り))。

 

『基本英文700選』は格調高い英文の数々で,大学受験レベルに止まらない英語力をつくるという意味でも有用な参考書と言えます。

左ページに英文,右ページにその和訳文という構成ですから,私は英文を繰り返し書いて暗記し,右ページの和訳文を見れば英文が出てくるレベルにまで昇華させました。

ただ,基本とは銘打たれているものの各英文のレベルは非常に高いため,高1生の頃にリーディングの教科書の予習をやり込んでいなければおそらく理解できなかったことでしょう。

単なる暗記で終わらせないよう,なぜその表現になるのか等も辞書や傍用文法書 (高校の指定図書だった『コンプリート高校総合英語』(桐原書店)) と日々格闘しながら突き詰めていきました。

 

先日,当塾の高3生 (理系) が「『基本英文700選』は断念した」と話していました。志望校から考えても本音としては取り組んでほしいところですが,人により合う合わないもありますからね。

ちなみにこの生徒の 5月の全統記述模試の英語科偏差値は72.6 (全国平均点は64.9点,本人の得点は152点) に達しており,順調に仕上がってきています。

 

私が高校生の授業時に紹介する例文は,その多くが『基本英文700選』で得たものがベースになっています。

当時につくり上げた “引き出し” が,現在の仕事 (授業) や海外の文献等を読む際に今も役立っているのです。言うまでもなく,大学受験時や在学時にも役立っていました。

 

単語は『速読英単語 必修編・上級編』(増進会出版社 (現 Z会出版)),文法は『基礎英文法問題精講』(旺文社) で基礎をつくり,並行して『基本英文700選』(駿台文庫) に取り組みました。

これが高1生の冬から高2生の秋にかけての取り組みです。

単語・イディオムだけでなく,短文を暗記することで英作文問題への対応力を高めようとしていたのがこの時期です。

 

和訳および解釈は,以前のブログでも紹介した『英文解釈教室』(研究社) と『英文和訳演習 上級編』(駿台文庫) で,これらに取り組み始めたのが高2生の冬です。

もちろん,『速読英単語』と『基本英文700選』はさらに深化させるべく 5周目・6周目へと突入していきました。

このマッチングに加えて長文読解への慣れは専ら英字新聞で,良書に出会えなかったこともあって下手な問題集には取り組みませんでした。

 

よく生徒たちにも話していますが,どの科目においてもプラスアルファのことに取り組むには学校の授業はもちろん各種課題を卒なく熟せることが条件です。

これらが儘ならない状況でプラスアルファに取り組んでも成果は出ません。

現在の高1生・高2生の進研模試で言うと,偏差値75程度に到達できていれば更なる上積みをしていく準備が整っていると言えます。

偏差値60にも到達できていないようであれば,英語ならばまずは単語と文法をきっちりと,数学ならば『Focus Gold』や『チャート式』といった傍用参考書と向き合うことが必要になります。

 

基礎を疎かにして無暗に問題集に取り組んでも到達できる地点は高が知れています。

高校受験レベルならば問題を解きまくるやり方である程度の結果を出せても,難関大学受験レベルとなると話が違います。実状はそう生易しくはないのです。

 

最後に,上記した英語の各参考書 (『基本英文700選』⋅『英文解釈教室』⋅『英文和訳演習』) は,京都大以上のいわゆる難関大を目指す際に必要になるものです。

国公立大でも英語はセンターのみといったケースはもちろん,私大をメインに考えている受験生には難易度が高すぎますから,その場合には全く別のアプローチが必要になります。

 

物事には順序や適性がありますし,根気よく取り組む,目標を持ってやり込むことでようやく成果の出せる参考書ですから,決して万能ではないということも併せて申し上げておきます。