この 2ヶ月で,2021年度から実施となる『大学入学共通テスト』(以下,共通テスト) の全容が明らかになってきました。
11月に発表があったように,『共通テスト』における英語科の民間試験導入は2025年度入試 (現中1生) まで延期が決まりました。
また,国語科および数学科の記述式導入に関しては,英語科のように期限を区切った延期ではなく,導入時期を示さない “無期限延期” となります。
これにより『共通テスト』は英語科の民間試験導入と国語科および数学科の記述式導入という大きな 2本柱を失うことになります。
当塾では現高2生を含む “共通テスト世代” に対し,英語科 4技能の民間試験に向けた Reading ⋅ Writing ⋅ Listening の指導に加えて Speaking の指導にもかなりの時間を割いています。
同様に,数学科および国語科の記述式に向けた対策として,毎週にわたって添削指導を行なっています。
それらは決して無駄にはならないものの,もう少し早い段階で正式決定してくれていれば,もっと他のことに時間を充てられたのではないかと考えます。
今回のように入試まで 1年前と間際になって変更だの延期だのとバタバタするのは,行政サイドの制度設計および見通しの甘さに他なりません。
現高2生にとっては『共通テスト』に関わる今回の騒動は “いい迷惑” 以外の何物でもありませんから,来るべき入試本番に向けて子どもたちを第一に考えてあげてほしいと切に願います。
とは言っても,種々の問題点さえクリアできれば,私は大学入試に英語科 4技能の民間試験を導入することと,国語科および数学科の記述式を導入することに賛成のスタンスでおります。
4技能へのシフトは,Reading と Listening 偏重のいわゆる “受験英語” から脱却する良い機会になると考えています。
ただし,民間試験に関してはアメリカの ETS や日本英語検定協会といった営利団体ではないところに担当してもらいたいというのが本音です。
これ以上,子どもたちを巻き込まないであげてほしいものですね。
記述式に関しては『共通テスト』のような受験者数の多い試験に導入するのは不向きであると考えますが,各大学の入試には導入すべきと考えます。
記述を通してある程度の論理的思考力を量ることができますし,内容や体裁からその受験生の “質” を見ることもできます。
マークのみで決着という私立大が大半という中,あれだけの受験者数を抱える早稲田大や慶應義塾大のように記述式での出題を頑なに守り続けている私立大も数校あります。
国公立大は基本的にどこの大学も記述式の出題を行なっていることからも,私立大は採点のしやすさや効率性を追求するだけでなく,たとえ数問でも記述式を出題すべきだと思います。
さらには,大学入試において理系だから国語が不要とか,文系だから数学が不要といった考え方も排除すべきと私は考えます。
国公立大は文系⋅理系を問わず基本的に一次試験に 5教科が課されますが,私立大はそうではありません。
なお,当塾から合格者が出ている東京大や京都大の二次試験には,理系学部であっても国語科の記述式の入試が,また,文系学部であっても数学科の記述式の入試が課されています。
今後,大学入試が子どもたちにとってより良いものになるよう願うばかりです。