国公立大学の出願が 1月24日(火) から始まりました。
共通テストを課す推薦入試 (学校推薦型選抜および総合型選抜) は 2月中旬頃に,前期日程 (いわゆる一般入試) は 3月10日(火) までに合格者が判明します。
当塾 8期生を含め,全国の受験生諸君が入試本番で全力を出し切り,悔いの残らない結果を出してくれることを祈るばかりです。
2月の中旬頃になると,塾や予備校のブログ等で例えば『岐阜大学医学部に推薦入試で合格!』といった文言が踊るようになりますが,この文言にはいくつか問題があることにお気づきでしょうか。
まず,岐阜大学医学部には医学科と看護学科の 2つの学科が設置されているので,この文言ではどちらの学科に合格したのかが明確ではありません。
誤解を招かないためにも,学科間で顕著な差がある場合はきちんと詳細を記載するべきです (昔のように医学科以外は『医短』として別組織にしたほうが良いというのが私の個人的な意見です)。
続いての問題は,仮に医学部医学科の合格だとしても,推薦入試の種別が一般枠による合格なのか,それとも地域枠による合格なのかが明示されていない点です。
皆様もご存じの通り,一般枠入学者 (前期日程での合格者を含む) と地域枠入学者とでは同じ医師でも求められるものが異なりますし,そもそも卒業後の進路も一般枠とは異なります。
一般枠と地域枠の合格者数を混同するのは,極端な例だと加納高の普通科と音楽科・美術科の合格者数を混同するようなものですから,誤解を避ける意味でも明確に区別して掲載するべきです。
ですから,あえて『岐阜大学医学部に推薦入試で合格』で一般枠か地域枠か明示していない場合は,おそらく “地域枠での合格を伏せたい” 等,何らかの意図があるのでしょう。
先日のブログでも申し上げたように,読み手を欺くような表記は避けるべきです。
それでは,岐阜大学医学部医学科の今春の一般入試と推薦入試の募集人員,共通テストの下限得点率,および直近 3年間の競争倍率にどの程度の差があるか見ていきましょう。
[一般入試 (前期日程) ] ※ 直近 3年間の平均競争倍率は 7.6倍
募集人員は55名,共通テスト得点率のボーダーラインは 80%
[推薦入試 (一般枠) ] ※ 直近 3年間の平均競争倍率は 1.7倍
募集人員は27名,募集要項に記載の “共通テスト基準点” は 78%
[推薦入試 (地域枠) ] ※ 直近 3年間の平均競争倍率は 1.5倍
募集人員は28名,募集要項に記載の “共通テスト基準点” は 70% から 74%
推薦入試の一般枠は 3年間コツコツと頑張って内申点を確保し,かつ共通テストで高得点を収めた受験生が一足早く合格を勝ち取るイメージです。
これは医学部医学科に限った話ではなく,名大や岐大など国公立大学の他学部の推薦入試においても同様の理解で間違いありません。
しかし,これが同じ推薦入試でも医学部医学科の地域枠となると話は変わってきます。
上記の各種数値からも明らかなように,地域枠は目安となる共通テスト基準点 (得点率) が一般入試と比較してかなり緩く設定されているばかりか,競争倍率もそれほど高くないことがわかります。
地域医療に関心があり,使命感と覚悟を持って医師を志すのであれば地域枠でも何の問題もありませんが,以前のブログでも申し上げたように,そうでない場合は地域枠を選ぶべきではありません。
全国で地域枠からの “離脱” が後を絶たないという報道も目にしますし,一般枠と地域枠とで医師免許を分けたり,悪質な離脱の場合は医師免許を剥奪する等,今後は強い措置が必要と思われます。
地域枠の崇高な理念を守るためにも,例えば一般枠なら一種,地域枠なら二種といったように,明確に医師免許を分けるよう厚労省が検討を開始してほしいと切に願っています。