合格実績と実進学先

 

新聞チラシや Web に目を向けると,塾や予備校が公表する “華やかな”「合格実績」の数字が飛び交っています。

 

ご存知の方も多いと思いますが,合格実績はその多くが「合格延べ数」であり「実進学数」ではありません。

私立大は 1名の受験生が同じ学部に複数合格 (一般入試とセンター利用方式の両方で合格など) したり,複数学部での合格もありますから,ダブル・トリプルのカウントになることがあります。

 

1名の受験生が 3つの受験方式で合格した場合,一般的に「合格実績」は 3名と表記されます。同じケースでこれが100名いれば300名,これが1,000名いれば3,000名と表記されるわけです。

こういったことが一般化されている現状に加え,中には悪質な “水増し” が含まれているケースもあると聞きますから,その数を鵜呑みにすることは非常に危険です。

 

塾や予備校のミッション・ステートメントは受講生を第一志望に合格させることであり,見せかけの合格実績を “つくる” ことではありません。

当塾はグロスの数字を “つくる” ことを追わず,あくまで塾生を第一志望に合格させることにこだわり,「合格実績」を公表する際は,昨春も行なった「実進学先」での表記を今後も継続します。

 

 

7名の高3生が在籍する塾があると仮定し,その動向をシュミレートしてみました。

 

[受験生 1 ]

〇 国立 A大学 (前期),〇 私立 a大学 (センター利用),〇 私立 a大学 (一般),〇 私立 b大学 (センター利用),〇 私立 b大学 (一般)  → 国立 A大学へ進学

[受験生 2 ]

× 国立 A大学 (前期),〇 国立 B大学 (後期),〇 私立 a大学 (センター利用),〇 私立 b大学 (センター利用),〇 私立 b大学 (一般),〇 私立 c大学 (センター利用) → 国立 B大学へ進学

[受験生 3 ]

〇 国立 B大学 (前期),× 私立 a大学 (一般),〇 私立 b大学 (センター利用),〇 私立 b大学 (一般),〇 私立 c大学 (センター利用),〇 私立 c大学 (一般) → 国立 B大学へ進学

[受験生 4 ]

× 国立 B大学 (前期),〇 国立 C大学 (後期),〇 私立 a大学 (一般),〇 私立 b大学 (センター利用),〇 私立 b大学 (一般),〇 私立 c大学 (一般) → 私立 a大学へ進学

[受験生 5 ]

× 国立 B大学 (前期),〇 公立 D大学 (後期),× 私立 a大学 (一般),〇 私立 b大学 (センター利用),〇 私立 b大学 (一般),〇 私立 c大学 (センター利用) → 私立 b大学へ進学

[受験生 6 ]

× 国立 B大学 (前期),× 私立 b大学 (一般),× 私立 c大学 (センター利用),〇 私立 c大学 (一般),〇 私立 d大学 (センター利用),〇 私立 d大学 (一般)  → 私立 c大学へ進学

[受験生 7 ]

× 私立 b大学 (一般),× 私立 c大学 (一般),〇 私立 d大学 (一般),〇 私立 e大学 (一般) → 私立 d大学へ進学

 

上記の 7名の受験結果を,多くの広告媒体で見かけるような「合格実績」の表記にすると以下のようになります。

 

国立 A大学 1名,国立 B大学 2名 など国公立大に 5名合格!

私立 a大学 4名,私立 b大学10名,私立 c大学 6名 ほか多数!

 

国立 B大学を例にとると 2名の合格者がいるものの,その陰には上記のケースだと 3名の不合格者がいるということも注目すべきです。

華やかな「合格実績」の裏側にはこんな “実情” があったりするのです。

 

それと,私立 b大学へ進学したのはわずか 1名なのに「10名合格」と謳います。大手塾や予備校になると,この数が 5倍,10倍,100倍などとなります。

上記 [受験生 7 ] のように,私立 b大学を第一志望としている受験生が「自分も…」と夢見てその塾や予備校で学習を始めるも,受験において厳しい結果になったということはよくある話です。

 

さらには,「国公立大 ○○名合格!」という表記も注意が必要です。

驚くべきことですが,この数に “加算” させるべく,受験生自身が進学する気もない地方の国公立大の受験を勧めるケースもあると聞きます。

 

どの程度がそれに当たるかはまちまちですが,国公立大の合格者総数が表記されている場合,併せて表記されている各国公立大の合格者数を引けばその数がある程度見えます。

「国公立大 ○○名合格!」の実に半数近くが,馴染みのない地方の国公立大だったりすることもあるようです。

国公立大なら何でも良いとばかりに十把一絡げにするのはいかがなものかと思いますし,やはり,総数での表記や,何らかの “意図をもって” まとめた表記というのは本当に怖いです。